Depreciation and Repairs

減価償却と修繕

賃貸経営の税務で、毎年の所得を最も動かすのは減価償却費と修繕費です。中古建物は、法定耐用年数ではなく簡便法で計算した年数で償却でき、築年数によっては4年で償却が終わります。償却が終わると所得が増えて納税額が上がるため、その年を事前に見通しておく必要があります。制度の説明は2026年9月時点のものです。

監修:三上浩平(公認会計士・税理士)/最終更新 2026年9月29日

Who

対象の方

  • 築古の木造アパートや戸建を取得した、または取得を検討している方
  • 決算書の減価償却費の計算方法(耐用年数の採用)を確認したい方
  • 大きな修繕を予定していて、経費にできる範囲を先に知りたい方
  • 償却が終わる年以降の納税額と資金の残り方を見通したい方

Basics

減価償却の基本

建物や設備は、取得のときにかかった金額を一度に経費にせず、法律で決められた耐用年数にわたって、少しずつ経費にします。これが減価償却です。土地は減価しないため、償却しません。国税庁は、建物の償却方法を定額法と定めています。定額法は、取得価額に耐用年数ごとの償却率をかけて、毎年ほぼ同じ額を経費にします。

住宅用の主な法定耐用年数と定額法の償却率

構造法定耐用年数定額法の償却率
木造・合成樹脂造22年0.046
木造モルタル造20年0.050
鉄骨造(骨格材の肉厚3mm以下)19年0.053
鉄骨造(3mm超4mm以下)27年0.038
鉄骨造(4mm超)34年0.030
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造47年0.022

減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一・別表第八による。1998年4月1日以後に取得した建物は定額法のみ、2016年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物も定額法のみです。

取得した年は、賃貸に供した月から年末までの月数で按分します。貸し始めた日が取得日と異なる場合は、取得日ではなく貸し始めた月から数えます。

Used building

中古建物の耐用年数(簡便法)

中古で取得した建物は、その後に使える期間を見積もって耐用年数とします。見積りが難しい場合は、簡便法で計算できます。計算式は次のとおりです。

  • 法定耐用年数の全部を経過している場合:法定耐用年数 × 20%
  • 法定耐用年数の一部を経過している場合:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
  • 計算結果の1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合は2年とします

計算例(新築から取得までの経過年数による違い)

構造・築年数計算耐用年数
木造(法定22年)・築10年(22 − 10) + 10 × 0.2 = 1414年
木造(法定22年)・築15年(22 − 15) + 15 × 0.2 = 1010年
木造(法定22年)・築22年以上22 × 0.2 = 4.4 → 端数切捨4年
鉄筋コンクリート造(法定47年)・築30年(47 − 30) + 30 × 0.2 = 2323年
鉄筋コンクリート造(法定47年)・築47年以上47 × 0.2 = 9.4 → 端数切捨9年

国税庁 タックスアンサー No.5404 による。築年数は取得の時点までの経過年数で、1年未満の端数は月数で計算します。

簡便法が使えない場合があります。取得のあとに行った資本的支出の額が、中古で取得した価額の50%を超えるときは、簡便法を使えません。大規模なリフォームを予定している場合は、取得の前に確認が必要です。

取得価額のうち、建物の価額がいくらかで、償却費の額が決まります。土地と建物を一括で購入した場合の按分は、購入・借換え・売却の税金のページで説明します。

Example

償却が終わる年の納税(数値例)

次の例は、説明のために作った計算例で、実在の物件ではありません。築22年を超えた木造アパートを、建物の価額1,000万円で取得した場合です。

建物価額1,000万円の木造の償却費(築年数による違い)

取得時の状態耐用年数償却率年間の償却費償却が続く年数
築22年超の中古(簡便法)4年0.250250万円4年(最終年は備忘価額の1円を残します)
築15年の中古(簡便法)10年0.100100万円10年
新築(法定耐用年数)22年0.04646万円22年

取得年は月数で按分されるため、取得年と最終年の額は上の表と異なります。

この例で、家賃収入から借入利子や管理費などを引いた後の所得(償却前)が同じであれば、償却が終わった年は、償却費250万円の分だけ課税所得が増えます。所得税と住民税を合わせた税率が30%の場合、年におよそ75万円の納税が増える計算です。一方、償却費は現金の支出を伴わないため、償却が終わっても手元の現金は変わらず、納税の分だけ現金が減ります。借入の元本返済が償却費を上回る場合は、利益が出ているのに現金が足りなくなる状態になります。

そのため、決算報告では、翌年以降の償却費の減少の見通しと、納税の見込み額を1枚にまとめてお渡しします。取得を検討する段階でも、物件判定書の中で償却の終了年を試算します。

Equipment

建物と設備の分け方、少額の資産

  • 給排水設備、電気設備などの建物附属設備は、建物本体とは別の耐用年数(15年など)で償却できる場合があります。購入時の内訳や見積書がある場合は、建物本体と分けて処理できるかを確認します
  • エアコン、給湯器などの器具備品は、耐用年数が6年で、建物とは別に管理します
  • 取得価額が10万円未満の資産は、取得した年に全額を経費にできます。10万円以上20万円未満は、一括償却資産として3年で均等に経費にする方法があります
  • 青色申告者は、一定の要件のもとで、取得価額が30万円未満(令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満)の資産を、年間合計300万円まで全額経費にできる特例があります。上限額が変わる前後で取得日により扱いが異なるため、取得日を確認して判断します

Repairs

修繕費と資本的支出の判定

修理や改良の支出は、その年に全額を経費にできる修繕費と、資産に加えて減価償却で少しずつ経費にする資本的支出に分かれます。建物の使用可能期間を延ばす支出や、価値を高める支出は資本的支出で、通常の維持や原状回復のための支出は修繕費です。境目が分かりにくい場合のために、次の基準があります。

修繕費か資本的支出か判定する基準

基準内容結果
少額の基準1回の修理・改良の金額が20万円未満修繕費
周期の基準おおむね3年以内の周期で行う修理・改良修繕費
金額の形式基準金額が60万円未満、または前年末の取得価額のおおむね10%以下修繕費
30%・10%の基準継続して適用する場合、支出額の30%相当額と前年末の取得価額の10%相当額のいずれか少ない額を修繕費とし、残りを資本的支出とする按分

国税庁 タックスアンサー No.5402 による。60万円未満・前年末取得価額の10%以下の基準と、30%・10%の基準は、修繕費か資本的支出かが明らかでない場合に使います。上の基準に当てはまらず、支出の内容が明らかに使用可能期間を延ばす、または価値を高めるものであれば、金額が小さくても資本的支出です。

  • 退去後の原状回復(クロスや床の張替え、設備の同等品への交換)は、一般に修繕費として扱います
  • 用途の変更、機能を上げる改装、増築は資本的支出です
  • 外壁や屋根の大規模な工事は、原状回復か性能の向上かで判断が分かれるため、工事の内容と見積書の明細を確認します
  • 一つの工事を複数の請求に分けて、形式基準に収めることはできません。工事の単位で判定します
  • 資本的支出の額が大きい場合、中古建物の簡便法が使えなくなる可能性があるため、取得直後の工事は取得価額との関係を確認します

判定に必要なのは、工事の見積書、請求書、工事前後の写真、工事の目的の記録です。修繕の内容は、あとから申告の根拠として確認できるよう、工事ごとに保存してください。

What we do

当事務所が行うこと

  1. 1

    取得時の内訳の整理

    売買契約書と重要事項説明書から、土地と建物の価額、諸費用、附属設備の内訳を確認し、耐用年数を決めます。

    事務所
  2. 2

    固定資産台帳の作成

    物件ごと・資産ごとに、取得日、貸し始めた日、耐用年数、償却方法、未償却残高を記録します。

    事務所
  3. 3

    工事の見積書の事前確認

    大きな修繕の前に、見積書の内訳を頂き、修繕費と資本的支出の見込みをお伝えします。

    ご一緒に
  4. 4

    償却の見通しの提示

    決算報告の中で、今後の償却費の推移と、償却が減る年の納税の見込みをお示しします。

    事務所

Documents

必要書類

  • 売買契約書、重要事項説明書、決済の精算書(取得した年)
  • 建物の登記事項証明書(築年月と構造を確認します)
  • 工事の見積書、請求書、契約書、工事の前後の写真
  • 前所有者から引き継いだ償却の資料(前オーナーの固定資産台帳や決算書)があればその写し

Fee

期間の目安と料金

顧問契約に含まれる決算の一部として、固定資産台帳の管理と償却の見通しを行います。取得前の個別相談(90分22,000円・税込、契約時は初月に充当)では、検討している物件の耐用年数と償却の年数の見込みをお伝えします。

FAQ

よくある質問

築古の物件は、簡便法の4年で償却するしかないのですか。
中古で取得した建物の耐用年数は、その後に使える期間の見積り(見積法)か簡便法で決めます。築22年を超えた木造なら簡便法では4年になり、償却費は大きく、早く終わります。償却が終わったあとの所得の増え方を、借入の返済、他の所得、売却の予定と合わせて事前に試算し、収支の見通しに入れておきます。
築古の物件を買った年に大きな赤字が出ました。他の所得と相殺できますか。
不動産所得の赤字は、原則として給与所得などと損益通算できます。ただし、土地の取得に充てた借入の利子は、損益通算の対象外です。詳しくは不動産所得の確定申告のページに記載しています。
エアコンを新しいものに交換しました。修繕費ですか。
取得価額が10万円未満なら、全額をその年の経費にできます。10万円以上なら器具備品として、耐用年数6年で償却するのが一般的です。同等の機器への交換を修繕費にできるかは、金額と内容で判断します。
前のオーナーの償却を引き継げますか。
引き継げません。中古で取得した建物は、取得した時点の状態を基に、自分の取得価額と耐用年数で償却を始めます。

監修:三上浩平(公認会計士・税理士) 東京税理士会 登録番号 第144424号。制度の内容は2026年9月時点のものです。代表税理士のページ

Sources

出典

  1. 国税庁 No.2100 減価償却のあらましhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
  2. 国税庁 No.5404 中古資産の耐用年数https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
  3. 国税庁 No.5402 修繕費とならないものの判定https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5402.htm
  4. 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015/
  5. 所得税法施行令(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
  6. 財務省 令和8年度税制改正の大綱(法人課税)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm
  7. 中小企業庁 少額減価償却資産の特例の拡充(40万円未満)https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/pamphlet/syougaku_shisan.pdf

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