Buying, Refinancing, Selling

購入・借換え・売却の税金

賃貸不動産の取引では、購入、借換え、売却のそれぞれで税金の扱いが変わります。購入時の按分は毎年の償却費を決め、借換えの費用は経費にできる時期があり、売却では所有期間によって税率が2倍近く変わります。取引の前に確認しておく点を時系列で説明します。制度の説明は2026年9月時点のものです。

監修:三上浩平(公認会計士・税理士)/最終更新 2026年9月29日

Who

対象の方

  • 賃貸物件の購入を検討していて、契約前に税務の論点を確認したい方
  • 金融機関に出す決算書の内容を整えたい方
  • 金利や返済期間の見直しで借換えを検討している方
  • 物件の売却を考えていて、売却後の税額と手取りを先に知りたい方

Acquisition

購入時の取得価額と、土地・建物の按分

物件を買うときに払う費用は、すべてが経費になるわけではありません。購入の代金と、購入に付随する費用は資産の取得価額に含めて、建物なら減価償却で少しずつ経費にし、土地なら売却するときまで取得費として残ります。

購入時の主な費用の扱い

費用一般的な扱い
売買代金(土地・建物)土地と建物に分けて取得価額にする
仲介手数料土地・建物の価額の比率で按分して、取得価額に含める
登録免許税、司法書士報酬(所有権移転)取得価額に含める
不動産取得税取得価額に含める方法と、その年の経費にする方法があり、個人は経費にできる場合がある(確認して選ぶ)
固定資産税・都市計画税の精算金(日割りで売主に払う分)取得価額に含める
火災保険料、融資の手数料、保証料経費または繰延の扱い。期間や区分で異なる

個別の扱いは、契約書と精算書の内容によって変わるため、取得の年に精算書を確認して処理を決めます。

土地と建物の価額は、建物だけが償却できるため、按分の比率で償却費が変わります。売買契約書に土地と建物の価額が分けて書かれているのが一般的です。売主が課税事業者の場合は、建物の代金に消費税がかかるため、建物の消費税額から建物の価額を逆算できます(消費税額 ÷ 税率 × (1 + 税率))。売主が個人で消費税のかからない取引の場合は、固定資産税評価額の比率で按分する方法などがあります。按分の根拠は、資料として保存しておきます。

建物の按分を大きくすると償却費が大きくなりますが、根拠のない按分は否認される場合があります。契約書の価額、評価額の比率、不動産鑑定など、説明できる根拠を選びます。

取得の前の段階では、次の点を数字で確認します。

  1. 家賃収入から管理費、修繕費、固定資産税、借入の利子を引いた不動産所得と、そこに償却費を加えた現金の残り(借入の元本返済を引く前後)
  2. 借入の元本返済額と償却費の差。元本返済が償却費を上回る年は、所得(税額)が現金の残りを上回ります
  3. 築年数から見た償却の年数と、償却が終わる年以降の納税
  4. 土地の借入利子の損益通算制限が、初年度の赤字に影響するか
  5. 消費税の取扱い(住宅の家賃は非課税で、購入時の消費税は原則として控除できません)

Financing

融資のための決算書

金融機関は、融資の審査で決算書(損益計算書と貸借対照表)と、借入の返済予定表を見ます。一般に、家賃収入に対する返済額の割合、借入の残高と資産の関係、決算の数字が通帳の動きと合っているかが確認されます。金融機関ごとに基準は異なるため、当事務所が融資の可否を保証することはできません。決算書の側で整えられるのは次の点です。

  • 青色申告決算書に貸借対照表を作成し、借入残高、預金残高、固定資産の簿価を通帳・返済予定表と一致させる
  • 減価償却費と借入の元本返済を分けて示し、償却前の利益(現金の見込み)が分かる資料を添える
  • 個人事業と生活費の資金を区別し、事業用の口座で入出金を記録する
  • 物件ごとの家賃収入、空室、修繕の推移を一覧にして、決算書と一緒に提示できるようにする
  • 役員への貸付け・借入や、法人と個人の貸借の残高を明らかにする(資産管理会社の場合)

顧問契約には、物件判定書と融資用収支計画(年4件まで)が含まれます。物件判定書は、購入を検討している物件について、収支、償却、税額の見通しをまとめたものです。融資用収支計画は、金融機関に提出できる形式の収支予測です。

Refinancing

借換えの検討と費用の処理

借換えは、金利の低い金融機関へ移る、返済期間を延ばして月々の返済額を下げる、複数の借入を一本化する、といった目的で行います。借換えでは、次の点を確認します。

借換えで確認すること

確認する項目内容
新しい借入の条件金利、返済期間、元本の返済方法、保証料・手数料、担保の設定
現在の借入の解約費用期限前返済の手数料(違約金)。事業用の借入なら、原則として必要経費にできる
諸費用の処理抵当権の設定・抹消の登記費用、保証料、事務手数料は、内容と期間に応じて経費の時期を決める
土地の借入利子への影響借入の使い道が変わる場合、土地に対応する利子の判定が変わる可能性がある
返済額と現金の残り返済期間を延ばすと月々の返済は減るが、総利息は増える。税引後の現金の残りで比べる

顧問契約に含まれる借換え診断では、現在の借入と借換え後の条件を並べて、税引後の現金の残りと総支払額を試算します。

金利が上昇する局面では、変動金利の借入の返済額が増え、税引後の現金の残りが減ります。金利が上がった場合の返済額を、借入の全体に一定の幅を当てはめて簡易に試算し、借換えの要否を検討します。

Sale

売却時の譲渡所得

個人が賃貸不動産を売ったときの譲渡所得は、売却価額から、取得費と譲渡費用を引いて計算します。取得費は、購入の代金と付随費用に改良費を足し、建物については所有期間中の減価償却費に相当する額を引いた額です。取得費が不明な場合や、売却価額の5%より少ない場合は、売却価額の5%を取得費とすることができます(概算取得費)。譲渡費用は、仲介手数料、測量費、印紙代、立退料、建物の取壊し費用など、売却のために直接かかった費用です。

長期・短期の区分と税率

区分所有期間(売却した年の1月1日時点)所得税住民税復興特別所得税を含む合計
長期譲渡所得5年を超える15%5%20.315%
短期譲渡所得5年以下30%9%39.63%

国税庁 タックスアンサー No.3208・No.3211 による。復興特別所得税は所得税額の2.1%で、長期は15% × 2.1% = 0.315%、短期は30% × 2.1% = 0.63%を加えた合計です。所有期間は売却した日ではなく、売却した年の1月1日で判定します。相続・贈与で取得した場合は、被相続人・贈与者の取得日から数えます。

同じ売却でも、年の途中で売るか、翌年の1月2日以降に売るかで、所有期間の判定が変わり、税率が変わる場合があります。売却の時期は、買主との契約や引渡しの条件も関係するため、売却を決める前に所有期間を確認します。

  • 建物の未償却残高が低い築古の物件は、取得費が小さくなり、譲渡所得が大きくなる傾向があります。売却前に、簿価と売却価額の見込みを並べて税額を試算します
  • 譲渡所得は他の所得と分けて計算する(分離課税)ため、給与所得などの赤字と通算することはできません
  • 資産管理会社が売却した場合は、譲渡益は通常の法人の所得に合算されて法人税の対象となり、個人の分離課税の税率は適用されません
  • 売却の年は、消費税の課税事業者に該当するかも確認します(建物の売却代金は課税売上になります)
  • 相続した不動産を売る場合は、取得費加算や空き家の特例などがあり、別のページで説明します

顧問契約には、売却の出口試算(年1件)が含まれます。売却する前に、売却価額の想定、譲渡所得の税額、借入の残高から、手元に残る金額を試算します。売却時の譲渡所得の申告は、顧問契約の範囲外で、お見積りです。

Documents

必要書類

  • 購入検討時:物件の概要書、賃貸借契約の一覧、直近の収支、借入の条件(見込み)、購入する名義(個人か法人か)
  • 融資用の決算書:確定申告書・決算書の直近3期分、返済予定表、通帳の写し
  • 借換え:現在の借入の契約書・返済予定表、新しい借入の条件が分かる書類
  • 売却:購入時の売買契約書・精算書、取得後の修繕・改良の資料、仲介手数料・司法書士報酬などの精算書、固定資産台帳

Fee

期間の目安と料金

物件を持つ前の判断は、取得前の個別相談(90分22,000円・税込、契約時は初月の顧問料に充当)でお受けします。顧問契約中は、物件判定書と融資用収支計画(年4件)、売却の出口試算(年1件)、借換え診断が月額に含まれます。売却した年の譲渡所得の申告は、個別にお見積りします。

FAQ

よくある質問

購入の前に相談する場合、何を用意すればよいですか。
物件の概要書(価格、築年、構造、家賃の一覧)と、購入する名義、借入の見込みがあれば十分です。個別相談では、償却の年数、初年度の税額、購入名義による違いを、その場で数字にして説明します。
売却した年に、他に確認することはありますか。
売却した年の翌年の住民税・国民健康保険料が増える場合があります。売却の見込みが決まった段階で、その年の納税額と、翌年の負担も合わせて試算します。
5年を超えていないと、売却は避けたほうがよいですか。
一律には言えません。売却を遅らせる間の収支、金利、空室の見通し、買主の条件と、税額の差を並べて比べます。税額だけで決めるのではなく、売却後の手取りで判断します。
借換えの諸費用は、その年の経費になりますか。
期限前返済の手数料や、抵当権の設定・抹消の費用など、費用の内容と借入の期間によって、その年に経費にする場合と、期間に応じて配分する場合があります。精算書を確認して処理します。

監修:三上浩平(公認会計士・税理士) 東京税理士会 登録番号 第144424号。制度の内容は2026年9月時点のものです。代表税理士のページ

Sources

出典

  1. 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
  2. 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  3. 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm
  4. 国税庁 No.6451 仕入税額控除の対象となるものhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6451.htm
  5. 国税庁 No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm

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