Selling inherited real estate

相続した不動産の売却と申告

相続した不動産を売却すると、売却益に対して譲渡所得の税金がかかります。相続税を納めた場合の取得費加算の特例と、被相続人の居住用家屋(空き家)の3,000万円特例では、期限と要件が異なり、両方を同時には使えません。このページでは、譲渡所得の計算、二つの特例、売却か保有かの判断の観点を説明します。制度は2026年9月時点のものです。

監修:三上浩平(公認会計士・税理士)/最終更新 2026年9月29日

Who

対象の方

  • 相続した土地・建物を売却する予定、または検討している方
  • 相続税の納税資金を作るために、不動産の売却を考えている方
  • 実家が空き家になっており、売却するか維持するか迷っている方
  • 賃貸中の不動産を相続し、持ち続けるか売るかを比べたい方

Capital gain

相続した不動産の譲渡所得の計算

譲渡所得は、売却価額から、取得費と譲渡費用を引いて計算します。相続で取得した不動産は、取得費と取得の時期を、被相続人から引き継ぎます。相続税評価額が取得費になるわけではありません。

  • 取得費:被相続人が購入したときの価額(建物は、経過年数に応じた減価償却後の額)に、購入時の仲介手数料などを加えた額です。購入時の資料がなく、取得費が分からない場合は、売却価額の5%を取得費とします。
  • 譲渡費用:売却時の仲介手数料、測量費、解体費用などです。
  • 所有期間:被相続人が取得した日から通算します。譲渡した年の1月1日時点で、被相続人の取得から5年を超えていれば、長期譲渡所得です。

長期譲渡所得の税率は、所得税15%、住民税5%です。所得税には、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わるため、合計で20.315%になります。所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得として、税率が高くなります。

譲渡所得の申告は、売却した年の翌年の2月16日から3月15日までに、確定申告で行います。相続税の申告とは別の手続きです。

Cost addition

取得費加算の特例

相続や遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売却した場合に、納めた相続税の一部を、取得費に加算できる特例です。相続の開始から、おおむね3年10か月以内の売却が対象です。

加算できる額=その人が納めた相続税額×売却した財産の相続税評価額÷その人が取得した財産の価額の合計額(債務控除前)。加算額が譲渡所得を超える場合は、譲渡所得の金額までです。

この特例は、相続税を納めていない場合は使えません。相続税の申告をして、税額が生じていることが前提です。土地や建物のほか、株式の売却にも適用されますが、事業所得や雑所得となる資産には適用されません。

計算の例(説明用の仮定):その人の相続税額が1,000万円、取得した財産の価額の合計が2億円、売却した土地の相続税評価額が3,000万円の場合、加算額は、1,000万円×3,000万円÷2億円=150万円です。

Vacant house

被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特例

被相続人が一人で住んでいた家屋(と敷地)を、相続人が売却した場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。主な要件は次のとおりです。

  • 家屋が、昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
  • 区分所有建物(マンション)でないこと
  • 相続の開始の直前に、被相続人以外に居住していた人がいないこと
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 家屋を耐震基準に適合させて売却するか、家屋を取り壊して敷地のみを売却すること(売却後、売却した年の翌年2月15日までに、耐震基準を満たす改修または家屋の全部の取壊しが行われる場合も対象になります)
  • 相続の開始から売却まで、事業・貸付け・居住に使っていないこと
  • 被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合は、一定の要件を満たせば、入所前の自宅も対象になります(国税庁 No.3307)

この特例は、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの売却が対象です。令和6年1月1日以後の売却で、相続人が3人以上の場合、控除額は一人あたり2,000万円までになります。

適用を受けるには、確定申告で、市区町村から交付を受けた被相続人居住用家屋等確認書、売買契約書、耐震基準適合証明書(家屋を残す場合)などを添付します。

賃貸中の家屋は、貸付けに使っているため、この特例の対象になりません。賃貸アパートを相続した場合は、取得費加算の特例を検討します。

Comparison

二つの特例の比較と計算例

取得費加算の特例と空き家の3,000万円特例の比較

項目取得費加算の特例空き家の3,000万円特例
対象相続で取得した土地・建物・株式など昭和56年5月31日以前の被相続人居住用家屋と敷地
売却期限相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日まで相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(令和9年12月31日までの売却)
前提相続税を納めていること相続税の有無を問わない
効果納めた相続税の一部を取得費に加算譲渡所得から最高3,000万円を控除(相続人3人以上は2,000万円)
賃貸中対象になる対象外
併用両方の要件を満たしても、同時に使えない(有利な方を選ぶ)同左

計算例(売却価額3,000万円、取得費が不明で5%の概算、譲渡費用100万円、加算額150万円、要件をすべて満たす仮定)

項目特例なし取得費加算空き家特例
売却価額3,000万円3,000万円3,000万円
取得費150万円150万円+150万円=300万円150万円
譲渡費用100万円100万円100万円
譲渡益2,750万円2,600万円2,750万円
特別控除――3,000万円(全額控除)
課税される額2,750万円2,600万円0円
税額(20.315%)約558万円約528万円0円

空き家特例の要件を満たさない賃貸中の物件では、右の列は使えず、取得費加算(中央の列)が選べる特例になります。数値は説明用の仮定で、実際の税額とは異なります。

Keep or sell

持ち続ける場合と売る場合の観点

  • 賃貸を続ける場合:相続人は、被相続人の取得価額と償却の状況を引き継ぎ、不動産所得を申告します。相続後の家賃収入から、借入の返済、修繕費、固定資産税を引いた手残りを見積もります。
  • 売却する場合:売却価額から、譲渡所得税、仲介手数料、必要に応じて解体費用を引いた手取りを計算します。相続税の納税資金として必要な額を、先に確認します。
  • 共有の場合:共有者全員の同意がなければ売却できません。分割の方法(現物分割、代償分割、換価分割)で、譲渡所得の課税関係が異なります。
  • 売却の時期:取得費加算の期限(相続の開始から3年10か月)と、空き家特例の期限(相続開始から3年後の年末)を、売却の前に確認します。売却の契約日と引渡日の、どちらを基準とするか、税務上の取扱いも確認します。
  • 相続税の申告前の売却:申告前に売却しても、相続税の申告は必要です。売却した財産は、売却価額ではなく、相続税評価額で申告します。

Documents

必要書類

  • 被相続人が購入したときの売買契約書、仲介手数料の領収書(取得費の資料)
  • 売却の売買契約書、仲介手数料・測量費・解体費用の領収書
  • 相続税の申告書の控え(取得費加算を使う場合)
  • 空き家特例の場合:被相続人居住用家屋等確認書、耐震基準適合証明書、被相続人の除票住民票、家屋の登記事項証明書
  • 賃貸の場合:賃貸借契約書、家賃の入金明細、借入の返済予定表

Schedule

期間の目安

売却の契約前にご相談いただくのが確実です。特例の適用可否は、売却の時期と方法(解体してから売るか、耐震改修して売るか)で変わります。確定申告は、売却した年の翌年2月16日から3月15日です。

Fees

料金

お見積りです。譲渡所得の申告は、物件の数、取得費の資料の有無、特例の適用で作業量が変わります。個人の確定申告の譲渡所得は、個別のお見積りです(「料金」のページに、確定申告の料金を記載しています)。

FAQ

よくある質問

相続税の申告前でも、不動産を売却できますか。
売却できます。ただし、相続税の申告期限(10か月)までに、申告と納税が必要です。売却代金は、納税資金に充てられます。取得費加算を使う場合は、相続税額が確定してから、売却の申告で反映します。
取得費が分からない場合はどうなりますか。
売却価額の5%を取得費とする方法があります。実際の取得費が5%を超える見込みの場合は、購入時の契約書、通帳の記録、当時の広告などで、証明できる資料を探します。
相続した実家を、相続後に賃貸に出した場合、空き家特例は使えますか。
使えません。相続開始から売却までの間に、貸付けの用に供すると、対象外になります。
空き家の売却で、家屋を取り壊さずに売る場合の条件はありますか。
家屋が耐震基準に適合している必要があります。売却までに耐震改修を行うか、売却した年の翌年2月15日までに、耐震基準を満たす改修または家屋の全部の取壊しが行われる場合も対象になります。要件の詳細は、売却の前に確認します。

監修:三上浩平(公認会計士・税理士) 東京税理士会 登録番号 第144424号。制度の内容は2026年9月時点のものです。代表税理士のページ

Sources

出典

  1. 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
  2. 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  3. 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  4. 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
  5. 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

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