Estate planning and gifts
生前の対策と贈与
生前の対策は、現在の財産で相続税がいくらになるかを試算することから始めます。そのうえで、贈与の方法(暦年課税か相続時精算課税か)、不動産を個人で持つか資産管理会社で持つかを、比較して決めます。このページでは、試算の進め方、贈与制度の違い、令和6年の改正で延びた加算期間、法人保有との比較を、2026年9月時点の制度で説明します。効果は前提条件によって変わります。
Who
対象の方
- 財産の多くが不動産で、相続税がいくらになるか見当がついていない方
- 子や孫への贈与を始めたいが、暦年課税と相続時精算課税のどちらが合うか分からない方
- 賃貸不動産を、個人で持ち続けるか、資産管理会社に移すか検討している方
- 配偶者と子のあいだで、どのような分け方が二次相続まで見て有利か知りたい方
Simulation
相続税の試算
試算では、現在の財産に、相続が起きたと仮定した場合の税額を、法定相続分で分割する場合と、希望する分割案の場合で、それぞれ求めます。財産の評価は、土地は路線価方式または倍率方式、貸家は借家権割合の減額を反映して行います。
- 1ご一緒に
財産の一覧作成
不動産、預貯金、有価証券、保険、借入金を一覧にします。不動産は、評価に必要な資料(登記事項証明書、固定資産税評価証明書、賃貸借契約書)をお預かりします。
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評価と税額の試算
現時点の評価額で、相続税の総額を計算します。小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減を適用した場合の税額も出します。
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分割案・贈与案の比較
配偶者と子の取得割合を変えた案、贈与を行った場合の案を並べて、一次相続と二次相続の合計額を比べます。
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納税資金の確認
相続税の納付に必要な現金が、遺産の中にあるかを確認します。不足する場合は、売却、延納、生命保険の活用などの選択肢を整理します。
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見直し
財産の評価額、法改正、家族の状況が変わったときに、試算を更新します。
生命保険の死亡保険金は、「500万円×法定相続人の数」までが非課税です。現金を保険に換えることで、課税される財産を減らせる場合があります。ただし、保険料の負担者と受取人の関係で、相続税ではなく所得税や贈与税の対象になる場合があるため、契約の内容を確認してから判断します。
試算は、評価額や税制が現在のままであることを前提にした概算です。実際の相続税の額を示すものではありません。
Annual gift
暦年課税の贈与
暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から、基礎控除110万円を引いた額に、贈与税がかかる制度です。贈与税の税率は、一般税率と特例税率の2種類があります。
- 特例税率:直系尊属(父母や祖父母)から、その年の1月1日時点で18歳以上の子や孫への贈与に使います。
- 一般税率:兄弟間、夫婦間、親から18歳未満の子への贈与などに使います。
計算例は次のとおりです。特例税率で、1年間に500万円の贈与を受けた場合は、(500万円-110万円)×15%-10万円=48.5万円です。一般税率の場合は、(500万円-110万円)×20%-25万円=53万円になります。
暦年課税で贈与した財産は、贈与した人の相続開始前の一定期間内であれば、相続税の課税価格に加算されます。令和6年1月1日以後の贈与について、この加算期間は3年から7年に延びました。
暦年課税の贈与財産の加算期間
| 相続の開始日 | 加算の対象となる贈与 |
|---|---|
| 令和8年12月31日まで | 相続開始前3年以内の贈与 |
| 令和9年1月1日から令和12年12月31日まで | 令和6年1月1日から相続開始日までの贈与(期間は相続の開始日に応じて3年超7年未満) |
| 令和13年1月1日以降 | 相続開始前7年以内の贈与 |
加算された贈与財産に対応する贈与税額は、相続税額から控除されます。令和9年1月1日以後の相続では、相続開始前3年を超える期間の贈与について、合計額から100万円が差し引かれて加算されます。
孫や、相続人でない人への贈与は、加算の対象外です。ただし、贈与を受けた人が遺言で財産を受け取る場合は、加算の対象になります。
Settlement
相続時精算課税
相続時精算課税は、贈与を受けた財産に、特別控除と一律の税率で贈与税をかけ、相続のときに、贈与時の価額を相続財産に加算して相続税を計算する制度です。贈与の時点で税を払い、相続のときに精算します。
- 対象:贈与する人は60歳以上の父母・祖父母、贈与を受ける人は18歳以上の子・孫(直系卑属)です。
- 特別控除:累計2,500万円まで贈与税がかかりません。超える部分には、一律20%の贈与税がかかります。
- 基礎控除:令和6年以降、この制度でも年110万円の基礎控除があります。基礎控除以下の部分は、相続財産に加算されず、贈与税の申告も不要です。
- 届出:最初の贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに、相続時精算課税選択届出書を、贈与税の申告書とともに提出します。
- 撤回:一度選択すると、その選択をした年以降、同じ贈与者からの贈与に暦年課税へ戻ることはできません。
計算例として、3,000万円の贈与を受けた場合は、(3,000万円-2,500万円)×20%=100万円が贈与税です。この100万円は、相続のときに、贈与財産3,000万円を相続財産に加算して相続税を計算し、納めた100万円を差し引いて精算します。
暦年課税と相続時精算課税の比較
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 贈与する人・受ける人 | 制限なし(税率区分は関係で決まる) | 60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫へ |
| 非課税の枠 | 年110万円 | 累計2,500万円と、年110万円 |
| 税率 | 10%〜55%の累進 | 2,500万円超の部分に一律20% |
| 相続税との関係 | 相続開始前3年〜7年以内の贈与を加算 | 贈与財産を全額加算(年110万円以下の部分を除く) |
| 制度の変更 | 毎年、選べる | 選択後は暦年課税へ戻れない |
| 小規模宅地等の特例 | 相続で取得した宅地は対象 | 相続時精算課税で贈与を受けた宅地は、対象外 |
贈与を受けた財産の価額は、贈与時の価額で相続財産に加算されます。贈与後に値上がりした場合、相続時の価額ではなく、贈与時の価額で計算するため、値上がりが見込まれる財産に向くことがあります。値下がりする場合は逆になります。
Real estate
不動産を贈与する場合の注意点
- 贈与税の評価は、土地は路線価等、建物は固定資産税評価額を基にします。ただし、借入金などの債務を引き受ける負担付贈与は、通常の取引価額(時価)で評価される取扱いがあります。借入のある賃貸不動産を贈与するときは、評価の方法を先に確認します。
- 贈与を受けた人には、登録免許税と不動産取得税がかかります。贈与税とは別の税金です。
- 賃貸中の不動産を贈与すると、その後の家賃収入は受贈者の所得になります。贈与者の相続財産は減りますが、受贈者の所得税は増えます。
- 小規模宅地等の特例が使える宅地(被相続人の自宅、貸付事業用の宅地)を生前に贈与すると、その特例は使えなくなります。贈与前に、特例による減額と比べます。
- 売却して現金を贈与する方法もあります。この場合は、売却益に譲渡所得税がかかります。「相続した不動産の売却と申告」に、譲渡所得の計算を記載しています。
Individual or company
個人で持つ場合と資産管理会社で持つ場合の比較
賃貸不動産を、個人で持ち続けるか、資産管理会社で持つかは、相続税、所得税・法人税、贈与、売却の四つの面で比べます。どちらが有利かは、財産の規模、家族の人数、所得の水準で変わり、一つの答えはありません。
個人保有と資産管理会社保有の比較
| 項目 | 個人で保有 | 資産管理会社で保有(不動産を会社が所有) |
|---|---|---|
| 相続税の評価 | 土地は貸家建付地、建物は貸家として評価。小規模宅地等の特例の対象 | 不動産は会社の資産。相続人が取得するのは会社の株式で、株式として評価する。会社が土地を多く持つ場合は、評価方法が特別になることがある |
| 収入にかかる税 | 所得税・住民税(累進税率) | 法人税・地方法人税・法人事業税など(法人の所得に課税) |
| 家賃収入の分配 | 家賃は所有者の所得。家族への分配は、贈与または不動産の持分の移転で行う | 役員報酬の支払いや、株式の贈与で、家族へ分配できる |
| 不動産を移すときの税 | ― | 個人から会社へ売却すると、譲渡所得課税、登録免許税、不動産取得税、建物の消費税がかかる |
| 売却時の税 | 個人:長期譲渡所得の税率20.315%(所有期間が5年を超える場合) | 法人:他の所得と合算して法人税等を計算 |
| 決算・申告 | 確定申告 | 法人の決算、法人税の申告、地方税の申告。社会保険の手続きもある |
表は一般的な違いを示したもので、個別の結論を示すものではありません。法人での決算申告は「法人化と資産管理会社」のページを参照してください。
個人から会社へ移す方法(売却、現物出資、建物のみの移転など)で、課税関係が大きく異なります。建物だけを法人に移し、土地は個人のまま貸す方法では、土地の使用の取扱いを、税務署への届出とあわせて確認します。移転の前に、費用と効果を試算して判断します。
Points
判断の分かれ目
- 相続税の納税資金があるか:ない場合は、贈与や資産の組替えより先に、納税の方法を確認します。
- 贈与の時期:7年の加算期間がある暦年課税では、開始が遅いと効果が小さくなります。加算期間の経過措置により、令和9年以降の相続でも、3年を超える期間の一部は加算されません。
- 相続時精算課税と不動産:小規模宅地等の特例が使える宅地は、この制度で贈与しない方が有利な場合があります。
- 配偶者への贈与:贈与税の配偶者控除(婚姻期間20年以上の配偶者に居住用不動産を贈与した場合、2,000万円まで)があります。ただし、二次相続の負担が増える場合があります。
- 家族の状況:相続人の人数、それぞれの資産、不動産を引き継ぐ人が決まっているかで、有効な方法が変わります。
Documents
必要書類
- 財産の一覧(不動産、預貯金、有価証券、保険、借入金)
- 不動産の登記事項証明書、固定資産税の納税通知書または評価証明書、賃貸借契約書、借入の返済予定表
- 家族の状況が分かる資料(家系図または相続人の一覧)
- 過去の贈与の記録(贈与税の申告書の控え、贈与契約書、通帳)
- 資産管理会社を検討する場合は、既存の法人の決算書、株主名簿
Schedule
期間の目安
試算は、資料が揃ってから面談で方針を伺い、案を並べる形で進めます。贈与や法人への移転は、実行前に、試算と契約書・届出の準備が必要です。実行の時期は、お客さまのご事情と、贈与税の申告期間(翌年2月1日から3月15日)を踏まえて決めます。
Fees
料金
お見積りです。試算のみのご依頼、贈与の申告を含むご依頼、法人への移転を含むご依頼で、作業量が異なります。
FAQ
よくある質問
毎年110万円ずつ贈与すれば、相続税はかかりませんか。
相続時精算課税を選ぶと、暦年課税に戻れますか。
孫への贈与は、相続税の加算の対象になりますか。
資産管理会社を作れば、相続税は減りますか。
監修:三上浩平(公認会計士・税理士) 東京税理士会 登録番号 第144424号。制度の内容は2026年9月時点のものです。代表税理士のページ
Sources
出典
- 国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
- 国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 No.4108 相続税がかからない財産https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm
- 国税庁 No.4155 相続税の税率https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
