Second Inheritance
二次相続の考え方
親の一方が亡くなった一次相続では、配偶者の税額軽減によって、配偶者が多く取得しても税額が抑えられます。しかし、その財産は、配偶者が亡くなったときの二次相続で、子が相続します。この記事では、一次相続と二次相続の税額の合計で比べる方法を、架空の例で計算します。制度と税率は2026年9月時点です。
Overview
二次相続とは
二次相続は、一次相続(たとえば父の相続)のあと、もう一方の親(母)が亡くなったときに起きる相続です。一次相続では、配偶者が取得した財産が、1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までなら、配偶者に相続税がかかりません。
ただし、配偶者に多く相続させると、二次相続で子が受け継ぐ財産が増えます。二次相続では、配偶者はすでにおらず、配偶者の税額軽減は使えません。法定相続人の数も減るため、基礎控除も小さくなります。
配偶者の税額軽減の適用上の注意として、隠蔽または仮装された財産は、軽減の対象になりません。
一次相続と二次相続の違い(この例の前提)
| 一次相続 | 二次相続 | |
|---|---|---|
| 法定相続人(この例) | 配偶者と子2人(3人) | 子2人(2人) |
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×3人=4,800万円 | 3,000万円+600万円×2人=4,200万円 |
| 配偶者の税額軽減 | 使える | 使えない(配偶者がいない) |
Premises
計算の前提と税率
- 一次相続の課税価格の合計は2億円で、すべて父の財産とします。相続人は、母(配偶者)と子2人です。
- 母は、自分の財産を持たず、一次相続で取得した財産だけを、二次相続まで持つとします。
- 小規模宅地等の特例、生前贈与、債務、葬式費用は考慮しません。財産の価額は、一次から二次までの間、変わらないとします。
- 税額は、各人が法定相続分で取得したと仮定した相続税の総額を、実際の取得割合で按分して求めます。
相続税の速算表
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | ― |
| 1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.4155。
First Inheritance
一次相続の税額の計算
一次相続の課税価格2億円から、基礎控除4,800万円を差し引くと、課税遺産総額は1億5,200万円です。これを法定相続分で分けると、母が7,600万円(2分の1)、子が各3,800万円(4分の1)です。
一次相続の相続税の総額
| 相続人 | 法定相続分に応ずる取得金額 | 計算 | 税額 |
|---|---|---|---|
| 母 | 7,600万円 | 7,600万円×30%-700万円 | 1,580万円 |
| 子(1人) | 3,800万円 | 3,800万円×20%-200万円 | 560万円 |
| 子(1人) | 3,800万円 | 3,800万円×20%-200万円 | 560万円 |
| 相続税の総額 | 2,700万円 |
この2,700万円を、実際の取得割合で按分し、母の分には配偶者の税額軽減を適用します。母が取得する割合を、次の4通りに変えて計算します。
Cases
母の取得割合を変えた場合の合計
母の取得割合ごとの、一次相続と二次相続の税額の合計(架空の例)
| 母の取得額(割合) | 子の取得額(各) | 一次相続の納税額 | 母の財産(二次相続の対象) | 二次相続の税額 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 8,000万円(40%) | 6,000万円 | 1,620万円 | 8,000万円 | 470万円 | 2,090万円 |
| 1億円(50%) | 5,000万円 | 1,350万円 | 1億円 | 770万円 | 2,120万円 |
| 1億2,000万円(60%) | 4,000万円 | 1,080万円 | 1億2,000万円 | 1,160万円 | 2,240万円 |
| 2億円(100%) | 0円 | 540万円 | 2億円 | 3,340万円 | 3,880万円 |
いずれも万円単位の概算です。一次相続の納税額は、母の分(配偶者の税額軽減後)と子の分の合計です。
母が取得する割合が40%のとき、母の分の税額は、軽減により0円になり、子が各810万円(2,700万円×30%)を納めます。二次相続では、母の財産8,000万円から基礎控除4,200万円を引いた3,800万円を、子2人が各1,900万円で取得し、税額は各235万円、合計470万円です。
母が全財産を取得する場合(100%)は、軽減の上限が1億6,000万円のため、軽減額は2,700万円×1億6,000万円÷2億円=2,160万円で、母の納税額は540万円です。二次相続では、2億円から4,200万円を引いた1億5,800万円を、子2人が各7,900万円で取得し、税額は各1,670万円、合計3,340万円です。
Reading the Result
計算結果の読み方
- 一次相続の税額だけを見ると、母の取得が多いほど小さくなります(1,620万円から540万円)。
- 二次相続の税額は、母の財産が増えるほど、急に大きくなります(470万円から3,340万円)。税率が財産の額に応じて上がるためです。
- 合計は、母が法定相続分(50%)の前後で低く、100%では、他の場合の約1.7倍から1.9倍になります。この例では、母の取得が40%のときの合計が最も小さくなりました。
- 最も小さくなる割合は、財産の額、相続人の数、母の固有の財産、特例の適用によって変わります。この例の結果を、他の家庭にそのまま当てはめることはできません。
一次相続の申告の時点で、二次相続までの合計を試算したうえで、母の取得額を決めます。申告期限までに分割を決めることで、配偶者の税額軽減の要件も満たせます。
Variables
試算で変える項目
- 母の固有の財産:母がもともと持つ財産があると、二次相続の対象が増えます。
- 小規模宅地等の特例:誰が土地を取得するかで、使える区分と減額が変わります。
- 生前贈与:暦年課税での贈与や、相続時精算課税の利用で、二次相続の財産を減らせる場合があります。
- 二次相続までの期間:期間中の生活費や収入によって、財産の額が変わります。
- 子の人数と、孫への遺贈:二次相続の基礎控除と税率区分が変わります。
当事務所では、相続税の申告の際、一次相続だけでなく、二次相続まで見た試算を作ります。母の取得割合を数通り変えた表を作り、合計額を並べて、分割の検討材料にします。
本ページは2026年9月時点の制度に基づく一般的な説明です。個別の事情で結論が変わることがあるため、実際の申告や判断の前に、お客さまの状況に合わせて確認します。
監修:三上浩平(公認会計士・税理士) 東京税理士会 登録番号 第144424号。制度の内容は2026年9月時点のものです。代表税理士のページ
Sources
出典
- 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
- 国税庁 No.4155 相続税の税率https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
- 国税庁 No.4152 相続税の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
- 国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
