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法人化を考える所得の目安

不動産の貸付けを個人から法人に移すかどうかは、所得の額だけでは決まりません。この記事では、個人と法人の税率を並べたうえで、法人化を考えるときに比べる項目と、複数の考え方を整理します。特定の所得額を境にして有利・不利を断定するものではなく、税率は2026年9月時点の国税庁の公表資料に基づきます。

監修:三上浩平(公認会計士・税理士)/最終更新 2026年9月29日

Tax Rates

個人と法人の税率

個人の所得税は、課税所得金額が増えるほど税率が高くなる累進課税です。法人税は、中小法人では、年800万円以下の部分が15%、それを超える部分が23.2%です。

所得税の税率(速算表)

課税所得金額所得税の税率控除額
195万円未満5%0円
195万円以上330万円未満10%97,500円
330万円以上695万円未満20%427,500円
695万円以上900万円未満23%636,000円
900万円以上1,800万円未満33%1,536,000円
1,800万円以上4,000万円未満40%2,796,000円
4,000万円以上45%4,796,000円

所得税には、各年分の基準所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わります(令和29年分まで)。令和9年分以後は、復興特別所得税の税率が1.1%に下がり、これとは別に防衛特別所得税1%が加わるため、合計は2.1%のまま変わりません。

法人税の税率(令和7年4月1日以後に開始する事業年度)

法人の区分所得の区分法人税の税率
中小法人(資本金1億円以下など)年800万円以下の部分15%
中小法人以外の普通法人全額23.2%

所得が年800万円を超える中小法人の、超える部分は23.2%です。年所得が10億円を超える事業年度は、年800万円以下の部分の税率が17%になります。令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、法人税額(基準法人税額)が年500万円を超える法人に、超える部分の4%の防衛特別法人税もかかります。

Numerical Example

税率を並べた数値例(架空)

課税所得が500万円、1,000万円、1,800万円のとき、個人の所得税(復興特別所得税を含む)と、法人の法人税(中小法人)を、速算表で計算した金額です。

個人と法人の税額の比較(架空の課税所得)

課税所得個人:所得税+復興特別所得税法人:法人税
500万円約58.5万円(税率の目安 11.7%)75万円
1,000万円約180.1万円(同 18.0%)166.4万円
1,800万円約449.7万円(同 25.0%)352万円

個人は住民税を含みません。法人は、地方法人税、法人住民税、事業税を含みません。法人の所得は、役員報酬を支払った後の金額です。

この表は税率の仕組みを見るためのもので、法人化が有利かどうかを示すものではありません。法人化すると、法人の所得とは別に、役員が受け取る報酬に所得税がかかります。個人と法人の合計で比べる必要があります。

Items to Compare

比べる項目

  • 所得の水準:個人の税率は課税所得に応じて5%から45%、法人税は15%と23.2%です。ただし、役員報酬にかかる所得税と合わせて見ます。
  • 役員報酬の設計:損金に入れるには、原則として定期同額給与などの要件があります。給与の改定は、原則として事業年度開始から3か月以内です。事前確定届出給与は、株主総会の決議の日から1か月と、事業年度開始の日から4か月のいずれか早い日までに届け出ます。
  • 事業的規模との関係:個人のまま事業的規模になると、青色申告特別控除が最高65万円になります。法人にすると、この控除はなくなります。
  • 社会保険と決算の費用:法人化すると、社会保険の加入や保険料の負担が生じる場合があり、決算・申告の費用も継続的にかかります。
  • 不動産の移し方:不動産を法人に所有させる方式と、管理を委託する方式などがあります。所有を移す場合は、譲渡に伴う税金と費用が生じます。
  • 融資と相続の見通し:金融機関からの借入の枠や、家族への財産の承継の計画も、法人化の判断に影響します。

Ways of Thinking

法人化を考える複数の見方

法人化のタイミングについては、次のように、見るものが異なる考え方があります。いずれか一つで決まるものではなく、当てはまる度合いを確認しながら総合して判断します。

法人化を考える見方の例

見方確認すること確認の例
所得の水準から見る課税所得が、個人の税率が高くなる水準に近づいているか課税所得が900万円以上になると、所得税の税率は33%になる
規模から見る棟数・室数が、事業的規模の目安に近づいているか独立家屋5棟、貸間10室が目安
資金から見る借入の枠、返済の見通し、納税資金の状況個人での借入が限度に近い場合
承継から見る相続や贈与の計画と、法人の株式の扱い家族への承継を法人で行う計画がある場合

たとえば、課税所得が900万円を下回っている間は、所得税の税率は最高でも23%です。ただし、法人化によって、融資の枠が広がる、承継がしやすくなるといった、税率以外の理由で法人化を選ぶ場合もあります。

Practice

当事務所の対応

法人の顧問契約は、不動産オーナーの資産管理会社に限っています。法人化を検討する段階では、現在の所得の見込み、物件の取得と売却の予定、借入の状況、家族の状況を伺い、個人のまま続ける場合と、法人にする場合を、同じ前提で試算して並べます。

法人化した後の決算と申告は、資産管理会社の顧問として、月額33,000円(1棟目、税込)から、2棟目から1棟ごとに11,000円で行います。料金の詳細は、料金のページをご覧ください。

本ページは2026年9月時点の制度に基づく一般的な説明です。個別の事情で結論が変わることがあるため、実際の申告や判断の前に、お客さまの状況に合わせて確認します。

監修:三上浩平(公認会計士・税理士) 東京税理士会 登録番号 第144424号。制度の内容は2026年9月時点のものです。代表税理士のページ

Sources

出典

  1. 国税庁 No.2260 所得税の税率https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
  2. 国税庁 No.5759 法人税の税率https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
  3. 国税庁 No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm
  4. 国税庁 No.2072 青色申告特別控除https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
  5. 国税庁 No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm
  6. 国税庁 令和7年度税制改正のあらまし(防衛特別法人税を含む)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025004-109_1.pdf
  7. 国税庁 防衛特別所得税及び復興特別所得税に関するQ&A(令和8年5月)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0026005-024_03.pdf

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