Valuation of land and buildings
土地・建物の評価
相続税は、財産を評価した額で計算します。土地の評価は、路線価方式か倍率方式かの選択、貸家建付地としての減額、小規模宅地等の特例の適用の三段階で決まります。同じ土地でも、これらの扱いで評価額が数割変わります。このページでは、評価の順序と計算例、判断が分かれる点を説明します。制度は2026年9月時点のものです。
Who
対象の方
- 自宅の土地に加え、賃貸アパート・マンション、駐車場、貸地などを相続する方
- 地方・遠方に、路線価のない土地や、規模の大きな土地を持つ方
- 小規模宅地等の特例を、自宅と賃貸用の土地のどちらに使うか迷っている方
- 生前に、財産の評価額と相続税の見込みを知りたい方
Order
評価の順序
土地の評価は、次の順序で行います。相続税評価額は、時価(実際に売れる価格)とは別の基準で決まり、路線価は公示価格の8割程度を目安に設定されています。ただし、実際の評価額と売却価格の差は、土地ごとに異なります。
- 宅地の利用区分ごとに分ける(自宅、貸家の敷地、駐車場、貸地など。利用区分ごとに評価します)
- 路線価方式か倍率方式かを決める(路線価図に路線価があるか、倍率表に倍率のみか)
- 形や道路との関係に応じた補正率で、自用地としての評価額を求める
- 貸している土地は、借地権割合・借家権割合・賃貸割合に応じて減額する
- 小規模宅地等の特例が使えるかを確認し、減額する
Road price
路線価方式
路線価が定められている地域では、路線価方式で評価します。路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額です。国税庁が毎年7月に公表する路線価図に、道路ごとに数字とアルファベットで表示されています。
- 数字は、1平方メートル当たりの価額を千円単位で表します。「300」なら30万円です。
- 数字の後ろのアルファベットは、借地権割合です。A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%を表します。「300D」なら、1平方メートル30万円で、借地権割合60%です。
路線価に、土地の形や条件に応じた補正率を掛けて、面積を乗じます。計算式は、路線価×補正率×面積です。補正率には、奥行きの長短による奥行価格補正、角地などの側方路線影響加算、二つの道路に面する場合の二方路線影響加算、形の悪い土地の不整形地補正、間口が狭い・奥行きが長い土地の補正、がけ地の補正などがあります。
計算例(自用地として評価する場合。数値は説明用の仮定)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 路線価 | 30万円/平方メートル(路線価図の表示は「300D」) |
| 面積 | 200平方メートル |
| 奥行価格補正率 | 1.00(標準的な奥行きの場合) |
| 自用地としての評価額 | 30万円×1.00×200平方メートル=6,000万円 |
実際の土地では、複数の補正が重なることが多く、地図と測量図で形状を確認して計算します。
Multiplier
倍率方式
路線価が定められていない地域では、倍率方式で評価します。土地の固定資産税評価額に、地域ごとに国税庁が定める倍率を掛けます。倍率は、国税庁の路線価図・評価倍率表で、市区町村・地目ごとに確認できます。
倍率方式の土地は、路線価方式のような補正率がなく、評価額が固定資産税評価額に連動します。形が悪い土地や間口が狭い土地でも、固定資産税評価額にそうした事情がすでに反映されているとして、追加の減額をしないのが原則です。評価額が時価より高いと感じる場合は、個別の事情の有無を確認します。
Rental
貸家建付地と貸家の評価
他人に貸している建物(貸家)の敷地は、貸家建付地として評価し、自用地より低くなります。借家人には、建物を利用する権利があるためです。
貸家建付地の評価額は、自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)で求めます。借家権割合は全国一律で30%です。賃貸割合は、課税時期に賃貸されている独立部分の床面積を、建物の独立部分の総床面積で割った割合です。継続的に賃貸されていた部分が、募集を続けたまま一時的に空室になっている場合(空室期間が1か月程度など)は、賃貸中として扱う取扱いがあります。(財産評価基本通達26。当ページの計算式は国税庁の通達に基づきますが、個別の適用は資料を確認して判断します)
計算例(自用地の評価額6,000万円、路線価図の表示が300D、賃貸割合100%の場合)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 借地権割合(D) | 60% | ― |
| 借家権割合 | 30% | ― |
| 減額の割合 | 60%×30%×100%=18% | ― |
| 貸家建付地の評価額 | 6,000万円×(1-0.18) | 4,920万円 |
| 賃貸割合が90%の場合 | 6,000万円×(1-0.6×0.3×0.9) | 5,028万円 |
貸家(建物)は、固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)で評価します。固定資産税評価額が2,000万円、賃貸割合100%なら、2,000万円×(1-0.3)=1,400万円です。
令和8年度税制改正の大綱(2025年12月)で、賃貸不動産の相続税評価の見直しが示されています。被相続人等が課税時期前5年以内に、購入や新築など対価を伴う取引で取得した一定の貸付用不動産は、令和9年1月1日以後の相続等で取得する財産の評価から、路線価や固定資産税評価額ではなく、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価します。課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%で評価できる取扱いとされる予定です。不動産特定共同事業契約などに基づく権利の目的となっている貸付用不動産は、取得の時期にかかわらず対象です。令和8年12月31日までの相続や、取得から5年を超えた不動産には適用されません。具体的な取扱いは財産評価基本通達で定められるため、2026年9月時点では内容の公表を確認しながら判断します。賃貸不動産を最近取得した方は、取得価額と取得時期が分かる資料を残してください。
同じ土地でも、空室が多い場合は賃貸割合が下がり、減額が小さくなります。相続開始の時点の入居状況が分かる資料(賃貸借契約書、家賃の入金明細、入居者一覧)が、評価の根拠になります。
Special
小規模宅地等の特例
被相続人の自宅や事業用の宅地を相続した場合に、一定の面積まで評価額を減額する特例です。減額される割合と面積は、宅地の区分で決まります。
宅地の区分ごとの限度面積と減額割合
| 宅地の区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(被相続人等の自宅の敷地) | 330平方メートル | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 400平方メートル | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 400平方メートル | 80% |
| 貸付事業用宅地等(賃貸アパート、駐車場などの敷地) | 200平方メートル | 50% |
特定居住用と特定事業用(特定同族会社事業用を含む)は、合計730平方メートルまで併用できます。貸付事業用を併用する場合は、次の式で限度面積を調整します。
併用する場合の調整式:特定居住用の面積×200/330+特定事業用の面積×200/400+貸付事業用の面積≦200平方メートル
貸付事業用宅地等の主な要件は、被相続人が貸し付けていた宅地を、相続人が申告期限までに貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで貸付事業を行い、その宅地を保有していることです。相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた宅地は、原則として対象になりません。ただし、被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて、事業的規模(貸付けがおおむね5棟10室以上)の貸付事業(特定貸付事業)を行っていた場合は、3年以内に貸し付けを始めた宅地も対象になります。
適用を受けるには、申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、計算の明細書と、遺産分割協議書の写しなどを添付します。複数の相続人が特例の対象となる宅地を取得する場合は、全員の同意が必要です。
計算例(貸付事業用宅地。前記の貸家建付地4,920万円、面積200平方メートル、他の宅地に特例を使わない場合)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 貸家建付地の評価額 | (上の例) | 4,920万円 |
| 減額される額 | 4,920万円×200÷200×50% | 2,460万円 |
| 特例適用後の評価額 | 4,920万円-2,460万円 | 2,460万円 |
自宅の宅地(特定居住用)にも特例を使う場合は、前記の調整式で限度面積が変わり、どちらの宅地に適用すると減額の総額が大きくなるかを計算して決めます。
Large lots
地積規模の大きな宅地の評価
三大都市圏では500平方メートル以上、それ以外の地域では1,000平方メートル以上の宅地で、一定の条件に当てはまる場合は、規模に応じた補正率を掛けて評価額を下げられます。条件には、路線価地域にあること、市街化調整区域でないこと、工業専用地域でないことなどがあります。地方の広い土地では、この補正の適用可否で評価額が大きく変わるため、地図・用途地域・道路の状況を確認して判断します。
Points
判断の分かれ目と注意点
- 宅地の利用区分:一つの土地に自宅と賃貸アパートがある場合など、利用区分ごとに分けて評価し、特例の区分も分けます。
- 私道・無道路地・セットバックが必要な土地:評価上の減額があるものと、ないものがあります。現地の状況と公図で確認します。
- 空室と賃貸割合:貸家建付地の減額は、賃貸割合に比例します。空室が一時的かどうかは、募集の状況などで判断します。
- 特例を使う相続人:貸付事業用宅地等は、事業を引き継ぐ相続人が申告期限まで保有し続ける必要があります。相続後に売却する計画がある場合は、特例の適用と売却の時期を、先に確認します。
- 評価額と売却価格の差:路線価は、売却価格より低く設定されます。相続後に売却する場合は、評価額ではなく、売却価格で譲渡所得が計算されます。「相続した不動産の売却と申告」を参照してください。
Documents
必要書類
- 登記事項証明書、公図、地積測量図、固定資産税の納税通知書または評価証明書、名寄帳
- 賃貸借契約書、家賃の入金明細、入居者一覧(相続開始日の時点のもの)
- 建物の図面、建築年が分かる資料
- 道路の状況が分かる資料(私道の持分、セットバックの有無)
- 被相続人の自宅の利用状況が分かる資料(住民票、同居・生計を一にしていた親族の情報)
路線価図と評価倍率表は、国税庁のホームページで公開されています。事務所が取得します。
Schedule
期間の目安
不動産の数と、資料の揃い方で変わります。評価は、遺産分割の協議に入る前に概算を出しておくと、分割案の検討が進めやすくなります。相続税の申告期限(10か月)から逆算して、評価は分割協議の開始前に着手することが多くなります。
Fees
料金
お見積りです。土地の利用区分の数が作業量に影響します。相続税の申告に含めてご依頼いただく場合と、評価と特例の判断だけをご依頼いただく場合があります。相続税申告の報酬は、遺産総額の0.5〜1%程度が一般的と言われています。この記載は一般論であり、当事務所の料金ではありません。
FAQ
よくある質問
路線価は、どこで調べますか。
貸家建付地の減額は、アパートの建物が古くても使えますか。
小規模宅地等の特例は、自宅と賃貸の両方に使えますか。
土地の評価額が高すぎると感じた場合、どうすればよいですか。
監修:三上浩平(公認会計士・税理士) 東京税理士会 登録番号 第144424号。制度の内容は2026年9月時点のものです。代表税理士のページ
Sources
出典
- 国税庁 No.4602 土地家屋の評価https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
- 国税庁 No.4155 相続税の税率https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱(資産課税:相続税等の財産評価の適正化)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_02.htm
- 国税庁 No.4614 貸家建付地の評価https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
